南国の隅っこ(旧)

元はてなダイアリーだった記事です。引っ越したのでデザインとか無視ですが、読めるだけでも……。

カタツムリミステリー、カメ短編も

 ちょっと前にどこかで見かけた、カタツムリを題材にした小説。やっと入手して、まだ読みかけてるところなんだけど、短編集だから、カタツムリテーマのうち一本(二本入ってる)は読んだ。


 パトリシア・ハイスミスって、これまで読んだことはなかったけど名前は知ってた、『太陽がいっぱい』の原作者だし、ミステリでは有名だよね。と思ってたんだけど、解説とか読んでるとそうでもないの?

11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

11の物語 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

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 まず、冒頭に入ってる「かたつむり観察者」。夕食に使われるはずだった食用カタツムリをふと見た男性が、その交尾中の姿にすっかり魅了されて、食べるのを中止、書斎に持ち込んで飼い始める。食用カタツムリってエスカルゴだよねえ、それが「淡水種」ってのがちょっとわからないし、それでも増えたカタツムリが天井やらシャンデリアにびっしり、ってことはやっぱり淡水生じゃないんじゃないの? とは思うけど。
 交尾や産卵、孵化の様子など、けっこう細かく描写されてて、解説によるとハイスミスの趣味のひとつが「かたつむり観察」なんだそうなw お友達になれそう!?
 でも、不満もあって、観察が趣味ならもっとカタツムリのかわいいところ、あの目の動きで興味や感情を示すこととか、渦巻きの魅力とか、ねっとりつやつやの首筋の(人によってはあれが気持ち悪いであろう)うろこのような模様とか、ガラスを這う足の裏の波打つ動きとか……書いてほしかったなあ。
 そして結末は、カタツムリ愛好者が卒倒しそうな、カタツムリが苦手な人も卒倒しそうな、どっちでもない人もカタツムリ嫌いになりそうな、展開なので、パティちゃん(=ハイスミス女史)、カタツムリ本当に好きなの? とちょっと疑いたくもなる。


 もう一個のカタツムリテーマの作品はまだ読んでないので、またあとで。 読みました。『クレイヴァリング教授の新発見』。新種を発見して学名に自分の名を残すことを夢見る生物学者が、南海の孤島に巨大かたつむりがいるとの情報を得て、一人でそこへ向かう話。15フィートとか6ヤードとか言われてもピンと来ないんだけど……もしかするとそのほうが好きな大きさを想像できていいのかも!? 
 ウルトラマンとかに出てくる怪獣並みのカタツムリかなあw 結末は、推して知るべし。
 ただ、この主人公は生物学者って設定だし、カタツムリ専門じゃないとしても、現れた二匹目のカタツムリを「前のやつの女房だろうか? それとも亭主だろうか?」とか、「メスらしいほうが」って記述があって、すごく気になった。まあ、成体のカタツムリが二匹出てくるのに、片方をオス、もう片方をメスというふうには書いてないからまだしもなんだけどさ……。それとも雌雄同体じゃないカタツムリもいるんだろうか? 有肺類は雌雄同体だと思ってたけどな。


 そしてこれには「すっぽん」というタイトルの短編も入ってて、それも気になって読んでしまったんだけど。まず、原題がTerrapinなんだけど、これ、スッポンなの? ウィキとかで調べてもスッポンをTerrapinとは言わないようだけどなあ……。
 と思ったんだが、読んでみて納得。食べるために買ってきたカメだったら、まあ何ガメか知らないけど、日本語ではスッポンと訳しておくのが無難かも。だって、まさかダイヤモンドバックテラピンとか食べない……よね?

【おっとー! あとで調べてみたら、ダイヤモンドバックテラピンまさに食用だったりするみたいです。あ、あんな美しいカメを……(・ω・) で、そもそもテラピンってのが食用ガメのこと??? いやあ、まだまだ知らないことだらけ……】
 そしてこれも、カメを見て興奮する男の子、近所の子に見せたら、これまでバカにされてたけどきっと友達になれるとウキウキ、でも食用と知って……これまた、見事なまでに後味の悪い作品w
 自分を押しつけてくるだけの母親と二人暮らしで、声を出さずに泣く方法を取得している男の子は、ある意味、甲羅に押し込められたカメみたいなものだったのかもね……。


 11の物語のうち、最初の3つを読んだだけだけど、後味悪いの好きな人にはお薦めですw
 あ、ちなみに表紙絵も、色覚検査にでもありそうな渦巻き模様だけど、よーく見るとこれがすべてカタツムリからなっている。ピンクや黄色のカタツムリはとってもかわいいんだけどね……。作品読んでから眺めると戦慄ですなw