南国の隅っこ(旧)

元はてなダイアリーだった記事です。引っ越したのでデザインとか無視ですが、読めるだけでも……。

メキシコの秋田犬の話

 今日も寒くて(24度くらい(・ω・))どんよりお天気で、例によってバタバタと忙しかったのでネタなし。イグコの食欲がだいぶ回復してきてバクバク食べてるけど。
 そこで昔ばなしの続きをします。またも悲劇的な秋田犬の話だけど。すでにどこかよそでも書いた気がするので、知ってる人もいるかもですが。


 日本での秋田犬もふもふ体験から、秋田犬は大変という刷り込みがしっかり出来上がっていた私だけど、気がついたら我が家に秋田犬が、という展開。それについてはまたそのうち書くとして、その故ワンコを飼い始めてすぐに獣医さんを通して知り合ったメキシコ人がいた。獣医さんの友人で、近所に住んでいて、筋金入りの秋田犬マニア。
 私たちが知り合った当時、すでに死んでいたヤロ(野郎?)というオスの秋田犬、当時すでに10歳くらいの高齢だったメスのトバ(鳥羽上皇?)、そして最近引き取ったという1歳ちょっとのオスのロン。Ronってスペイン語ラム酒のことだから、その意味のロンかと思ったらロナルドの略称のロンなんだって。えらいグリンゴ(=米国)な名前だなあ。


 このロンってのが、実に立派な秋田犬だった。メキシコでは珍しい、アメリカンじゃないちゃんとした日本の秋田犬(でもメキシコシティあたりにちゃんとした日本人のブリーダーさんがいる、というか少なくとも当時はいたみたい。そういう話は聞いていたけど、仔犬のお値段は聞いただけでうちにはご縁がないな、というレベルだった。まあ純粋な日本の秋田犬ならそれも当然なんだけどね)。足はすらっと長く太く、背は力強く盛り上がり、尾は見事に巻いてふっさふさ。
 うちのワンコを連れて訪問したとき見せてもらったんだけど……触らせてもらえなかった。柵越しに観賞しただけ。なぜならば……。


 このロン君、とっても凶暴だというのだ。私はこれまでたいていの犬は平気だったし、少々吠える犬でも割とすぐに手なずけるほうだったから、大丈夫だよ〜と思ったけど、おじさんは、断固拒否。ぜったい危ないという。まあそこを無理押し通して本当に何かあったら向こうに申し訳ないから、あまり強く言えなかったってことはあるけどね。
 秋田犬を何頭も飼ってきたおじさんが、最初からこのロンを飼っていればこんなことにはならなかったんじゃないかと思う。でも最初は別の家庭で飼われていたんだそうな。そこではロンが一歳になるまでまったくしつけらしいしつけもせずにいた。んで、でっかくなって、ある日帰宅した奥さんに(たぶん嬉しくて)飛びついた。奥さん、転んだ。妊娠中だったので、大騒ぎになって、こんな危ない犬はうちに置いておけん、ということになり、今のおじさんに引き取られたんだと。
 いやいや、まずしつけしようよ。どうしてみんな、しつけしないの? 大型犬なのは最初からわかってるし、日本犬全般、頑固な性格であることも、それをしつけなかったらどうなるかも予想できるだろうに……。まあでも、日本人ならまだしも、メキシコ人だと素直な洋犬の大型犬みたいなイメージで軽く考えちゃうのかねえ。


 ともかく、秋田犬に詳しくてきちんと訓練できるおじさんに引き取られてよかったねー。おじさんが、まあすでに一歳超えてるから仔犬のようには行かないけど、少しずついろいろ教えているところとのことで、おじさんにはもちろんしっかり服従しているというし。ただ、他の人に対してはいきなり前触れもなく襲いかかることがあるから近付かないでくれ、というのが言い分だった。
 年齢的にはうちの故ワンコと近かったけど、うちのもテンション高い性格で苦労していたころだったので、交配はとりあえず考えなかった。まあ両方がある程度の年齢になって落ち着いたら……もしかして、くらいには思ってたけど。
 ところが、それから半年か一年ほどして獣医さんから聞いた話。ロンはおじさんのトレーニングを受けてはいたけど、まだまだ他人には扱えない時期におじさんが仕事で出張することになり、間の悪いことにそのあいだにロンが病気になったと。獣医さんは懇意にしているので、連絡をもらって駆けつけ、助手の男の子4人がかりでロンを押さえつけて注射を打つことを数日繰り返し、病気は治った。けど、さらに凶暴になっちゃった……。


 この獣医さん、今でもお世話になってるが、私がメキシコに来て割とすぐに(ということはドイツ人気質がまったく抜けきってないころに)知り合ったので、うちの猫や故ワンコに対して治療するときもいちいち説明してもらってからでないと納得できない! ってあたりが、最初のうちはお互いどちらもわかり合えなくてあーだこーだ議論になった。まあだんだん、私が生物学はやってきたからある程度のことは理解できるとわかってくれてからは、ちゃんと説明してくれるようになったけど。
 そんな獣医さんでも、うちの故ワンコにワクチンとか注射するとき、どうしても助手の男の子たちを呼ぶのだよねえ(最初のころね)。で、今のワンコはまったく平気なんだけど、前のワンコは知らない人に触られるのがイヤなタイプだったので、ましてや押さえつけられたらよけい暴れる。暴れるからさらに押さえつける、の悪循環。それを、私が保定してたら暴れませんから、というのを何度も何度も説明して(まあ獣医さんにしてみたら信用しきれない、それで噛まれるの自分だし、って思ってたんだろうね)、そのうち(一年以上かかった気がする)ようやくわかってくれて、問題なく注射できるようになった。


 うちのワンコの場合、しかも飼い主である私がいれば問題はないとしても、あのロン、ましてや飼い主がいない状態で、注射するにはそれしか方法なかったんだろうな、とは思うけど……。
 結局それでますます凶暴になり、奥さんに噛みつき、おじさんにも噛みつき、とうとう娘さん(小学生くらいだったと思う)にも噛みついてしまって……。手に負えない(まさに)、ということで安楽死……。


 秋田犬、というか日本犬全般だと思うけど、飼い主をそう簡単に切り替えられないんだなあ、ハチ公もそうだったんだろうけど、とつくづく思った出来事だった。最初からこのおじさんに飼われていれば、あるいは最初の家族がきちんとしつけをしていれば、こんなことにならなかったんじゃないかと。
 しつけって言っても、コマンドに従って芸をするようなことではなくて、信頼関係というか、飼い主や家族に噛みつかないのなんて基本中の基本。気に入らないことは、そりゃ犬にだってあると思う。それを意志表明するのもいいと思う。でも、人と犬がお互いを尊重し合って生活するための信頼関係というかさ。


 まあこの辺については、私自身、故ワンコの最初のしつけに悩んだ時期と今とで、だいぶ考え方も変わってきているし、それを書き始めると長くなるので、またそのうち。確かに、今のワンコは特にしつけというしつけはしなくても、ちゃんとこちらを尊重し(私もワンコの意志を尊重してます)一緒に生活できるパートナーになってくれているから、個体差ってのも大きいんだろうなとは思うけど。


 とにかくこれで、秋田犬は大変、というのがさらに強化されて刷り込まれてしまったわけで。でもそのときはすでに我が家に秋田犬がいて、実際大変だったけど、とにかくそんな結末にならないよう頑張るしかない!
 ってことで頑張った。私もワンコも。そしてまあ幸せな12年間を過ごせたと思う。もちろんもっと経験を積んだ人やプロから見たらお粗末なものだったろうけど、とにかく何とかなった。今思えば、あのときのあれは失敗だった、とか、こんなふうにしてやればよかったのに、と後悔も多いけど、それは今のワンコである程度活かせてるしね。


 うーむ、この話の流れだと、次はやっぱり犬の「しつけ」について書きたくなりそうだなあ。このブログの主旨から外れるかと思って、これまで書きたくてもやっぱりやめとこ〜、と思ってたんだけど。まあ成り行きに任せます。



 今日のニャンタ。私たちが出かけるとき、ワンコが床に寝るのは寒いからとソファに乗るので(許可している)、ワンコ用毛布をソファに敷いてやって出ていったのに、帰ってきたら、この始末。

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 仔猫に寝床を横取りされる秋田犬。ま、そんな秋田犬もいるんだよねw 猫と犬の力関係ってこういうのけっこう多いみたいだしねw