南国の隅っこ(旧)

元はてなダイアリーだった記事です。引っ越したのでデザインとか無視ですが、読めるだけでも……。

うちのワンコたちとの出会い

 今日も少しだけ書きます。でもだんだん、話がとっちらかりそうで、大きなテーマ(私にとって)は書きだすと果てしなく長くなりそうだから、つい避けてしまうかも。
 今日も、メキシコでどうやって秋田犬を飼うことになったか、という話だけにしようと思います。どちらも、けっこうドラマだった?w

前のワンコの場合

 私がメキシコに来てすぐは、街中の小さなアパートに住んでいたけど、そこでも泥棒にやられたことはあった。しばらくして郊外のコロニー(入り口に一応警備員がいて、まとまった単位の家が集まっている住宅コロニー)の一軒家を借りて住み始めて、またまたすぐに空き巣に入られた……。裏庭の塀を超えて、裏口のドアノブをひんねじって侵入という手口。当時すでに所有していたパソコンをやられなかったのはラッキーだったけど、どうやらプリンタを盗もうとしたところにダンナが表から帰宅して慌てて逃げたらしく、プリンタが机の上に落っこちてたという。これ、うっかり鉢合わせしたら、ダンナが怪我させられてたかもしれないしね、そう考えると、ぞっとした。


 それで気が付いたけど、当時の家の裏はジャングルと空地で、いくらでも人が入ってこられるところだった(今は巨大なスーパーになってるけど)。うちの並びの他の家はみんなわかってるから、塀のうえにガラスの破片を植えたり、鉄条網を張ったり、あるいはコンクリで裏庭を閉じちゃって断固入れないようにしたり……あるいは、犬がいたりした。
 うちが入ったばかりのその家だけですよ、塀がのっぺり何の防犯対策もしてなくて、犬もいないなんて。そりゃ狙われるわー。


 ということで、犬を飼おうかと検討し始めたんだけど、チワワとかじゃ役に立たないし、大型犬はしつけが大変だよ!!! しかもこんな町にしつけ教室とかあるわけないし!!! と思ってたので、いろいろ後ろ向きだった。
 ある日、昼ご飯に帰宅したダンナが、なんか(当時としては珍しく)ウキウキした感じで、今朝仕事に行くとき、この近所でハスキー犬の訓練してる人を見かけたから声をかけてみた、っていうんだわー。このころのダンナ、仕事のストレスで毎日どんより暗くて、知らない人に声をかけるなんてことをする余裕がよくあったなー、と今でも思う。
 ふむ、声かけて、何訊いたの? その犬、お宅の犬ですかって訊いた。ふむふむ。そしたら、違う、訓練してるって言ってた。ほほう。訓練士さんはいるんだねえ(どれだけあてになるかはわからないけど、とどこまでも懐疑的な私)。で、その人、犬の販売もやってますって。ふーん、どうせチワワとか(原産国だけに、ほんっと多いのよチワワ)何とかテリアとか小型犬ばっかじゃないのー? と加速する私の懐疑。そしたら……
 犬種訊いたら、ニキータって言ってた。とダンナ。


 ニキータ……。それ、ソ連かどっかの女スナイパーじゃなかったっけ?


 そんな犬種いないでしょ。アキタ、ならいるけど、まさかねえ。と何気なく言ったら、ダンナ、あーそれそれ! アキタって言ってた!


 嘘つくんじゃねえこんにゃろ、って思いましたね。テキトーなこと言って私を誘い出して、実際に仔犬を見たらテリアだろうがチワワだろうが(念のため言っておきますが、別にこの2種が嫌いとかでは決してないです、単純にこの辺で最もよく見かける小型犬の代表ってことで、かつ、今ではこれらの犬も立派な番犬になるってことも承知してます。でも当時は知らなかったのよねー)、私が籠絡されるとか思ってんじゃねーよコラ、とか思いましたね。
 でもダンナが、アキタだと言い張る。いやいやいや、このメキシコの片隅の田舎町で、たまたま声をかけた人が売ってる仔犬が秋田犬だなんて、私の夢の秋田犬だなんて、あるわけないやね。第一、メキシコ全国にそもそも秋田犬なんているの? と懐疑100%の私。
 とにかく、訓練学校(?)の場所を聞いてきたから、見に行こう! と珍しく積極的なダンナにイヤとは言えずに出かけたわけです。


 訓練学校ったって、だだっ広い空き地しか見えませんでしたが、とにかく数人のお兄さんたちと犬たちがいて、ダンナと話したお兄さんが、そのニキータ犬を連れてきてくれた。いや、ホントにアキタだって言われたので、えええええええええ!? って感じで私も見る気満々。
 でも、13歳くらいの男の子が抱えてきてくれた黒い毛むくじゃらの塊。まっ黒で顔もよく見えないので、ちょっと見せてもらっていいですか、と顔を見ようとしたら……男の子の手からするっと抜けて疾走し始めた。あっという間に遠ざかる。何しろ広い空地、男の子が何度もタックル喰らわせて、ようやく捕獲。
 もうほぼ心は決まってたけど(だって秋田犬でしょ?)、ダンナが、他にもいるって訊いたけど、と切り出すと、あーいますよ、今5ヵ月のイタリアンマスティフ、って連れてきてくれたのが……で、でかい! うち、猫がいるんでこんなでかいの無理です、って言ったけど、今考えたらこの子のほうがとーっても落ち着いていたので、猫とも大きさ云々関係なく、うまくやれたかもねー。
 とにかく、秋田犬(血統書とかはないけど)だというその仔犬を買うことに決定。15年前だけど、1500ペソ(当時で1万5000円)だった。インフレを考慮しても、安かったねえ。

ワンコ1

 こんなぶっちゃいくな犬だったw うちに来た当時、すでに二ヵ月半。でもまだデジカメがなくて、写真が少ないのが残念。

今のワンコの場合

 さて、前のワンコが12歳で死んで、すぐには私は次の犬なんて考えられなかった。ダンナはすぐに欲しがっていたし、防犯の点からもいずれは犬を飼わなきゃなーとは思ってたけど。そして次の犬もアキタ、アメリカンアキタにすることは、私もダンナも暗黙の了解、それ以外考えられなかったです。
 しかし問題は……どこでアキタが手に入るか? 私の気持ちもどうにかなりそうになってきた一年後くらいから、ぼちぼちペットショップとかで訊いてみるんだけど、あー秋田犬ね、はいはい米国からの直輸入で血統書付きで26万円(ま、だいたい)になります、とか。ジョーダンじゃないわね、別にドッグショーに出すわけじゃなし、うちでかわいがるだけの犬にそんな値段出せんわ。血統書とか、別にいらんし。


 いちばんいいのは、前のワンコを売ってくれた(そのあとちょっと訓練もしてくれた)お兄さんに訊いてみることだけど……。長年のあいだにコンタクトは途絶え、電話番号もわからない。あの学校はどこだっけ、と記憶を頼りに探したけど見つからない。
 そう言えば前のワンコがまだ生きてたころに、散歩させてたら近所の人が、あのお兄さんの名前を挙げて、訓練頼もうかと思ってるんだけどどんな感じでしたか、と訊いてきたことがあった。あーあの人ね、昔の話だけどきちんとやってくれましたよ、と答えたけど、もしかしたら訓練受けてるかもしれない、とその家を訪ねていったりもした。でも結局その家では訓練は頼まなかったし、連絡先ももうわからないと。
 他に当てはないし、どうしようかねえ、と言いつつ日々を過ごしていたんだけど。ある日曜日、どこだかに用事があってダンナと車で出かけ、でも行ってみたら閉まっていたのでそのまま引き返す帰宅途中。ある道を走ってて、ふと道端に立っているおじさんが目についた。
 あーーーーー、あの人! 前のワンコ売ってくれた人だよ!
 私、人の顔覚えるの苦手です。声や口調は忘れないんだけど、顔はねー。でもこのフリオ兄ちゃん、ちょっと下膨れの人の良さそうな顔つきが印象的だったのと、そのとき犬を連れていたからだと思う、確信を持ってフリオだと思った。
 ダンナに車を寄せて停めてもらって、その地点まで引き返す。フリオ兄ちゃん、車で軽い事故を起こして現場の検分中だったw 声をかけたら向こうも覚えていてくれて、実はこうこうで、アキタの仔犬ほしいんですけどと言うと、知り合いにいるから訊いてみる、との嬉しいお言葉。連絡先を交換して別れた。


 まあそこから実際に仔犬を手に入れるまではだいぶ紆余曲折もあったけど、フリオの奔走のおかげで、今のワンコが我が家に来たわけです。血統書付きではない、普通の家庭犬から生まれた仔犬。でもいちおう秋田犬。
 まあ実際には、今のワンコはかなり雑種だとは思う。尻尾だけはキリキリと二重巻きになってるけど、体つきとかは前のワンコのほうが日本犬っぽさがあった。今のワンコは骨格が華奢だし、短毛であんまりふさふさしてない(暑いところだからそのほうが過ごしやすそうだけど)。でもまあ、飼っちゃえばそんなことはどうでもよくなるよねw
 あのときフリオが事故を起こしてなければ、私たちの出かけた先が閉まっていなければ、あの道を通らなければ、出会うことはなかったと思うと、すごい幸運だった。前のワンコを通じての付き合いがなくなってからの10年ほどのあいだに、偶然出会ったのって2回くらいだったしね。


「だけ」とか言いながら、またまた長くなりました。まあこういう、ニキータだとか事故の偶然とか、いろいろと変な要素を含む出会いでうちに来た二頭なのです。


CIMG1532

 今のワンコ、我が家に到着した日の寝顔。生後7週間弱だった。