南国の隅っこ(旧)

元はてなダイアリーだった記事です。引っ越したのでデザインとか無視ですが、読めるだけでも……。

イグアナ本からのメモあれこれ

 こないだ届いたドイツ語のイグアナ本、ざっと通し読みしておこうと思って読んでるんだけど、いろいろ面白いことが書いてあるので忘れないようメモ。

ボビングの図解

 最初に買った本には文章でしか説明してなかった5種類のボビングが、この本では図解入りで載ってるのでありがたい(39p)。最初の本を読んだときはボビング自体をほとんど見たことがなかったので、文章からはなかなかうまく想像できなかった。今はちょっとはわかるようになってるけど、それでもこの図解はありがたい。

 一番上は英語でHead Jerk、一回きりの上下運動。コミュニケーションじゃなくて、周囲を確認するための動作。
 二番目は英語でSignature-Bob、力強く大きな反復運動から徐々に振幅が小さくなるもので、相手に対して自分の存在を誇示する動作。
 三番目は英語でShudder、振幅の小さい素早い上下運動。たいていオスとメスが3m以内の距離にいるときに見られるが、求愛行動ではない。
 四番目は英語でRoll、上下運動に加えて左右にも首を振る。発情期にテリトリー主張やメスへの求愛行動で見られる。
 そして図解にはないけど、3と4を取り混ぜたRoll-Shudderというのもあると。まあ4種類や5種類に分けたところで、これはすごく簡易化したものであって、実際のイグアナのボビングはもっと複雑で奥が深いとか。まあそうだろうね。イグコが鏡を見てのボビングとか、一度新しい容器で餌を出したらそのときも3番目の細かいボビングしてたのは怪しんでのことか? まだまだ観察の余地あり。

鼠蹊孔分泌物について

 オスが鼠蹊孔から出す分泌物、今ちょうどイグリンコがじわじわと地味に出してるけど、これがイグアナ同士の化学的なシグナルとして機能してるという実験結果(42〜43p)。自分の分泌物、知ってるイグアナの分泌物、未知のイグアナの分泌物と比較すると、知らないイグアナの匂いに盛大に反応するという。
 ふーん、これってもしかして、イグリンコのあれを普段からイグコに匂いをかがせておいたら、初対面のときでも、「あら、この殿方以前にどこかでお会いした方かしらん」なんて思っちゃうかもね? どっちかというと、イグリンコにイグコの存在を前もって知らせておきたい気もするんだけど、メスの匂いはどうすればいいんだろうか?

幼体の食糞について

 イグアナの消化についてけっこう長々と書かれているんだが、その最後に(47p)、イグアナがメインで消化する大腸にはClostridiumとLeuconostocという原生動物が共生していて消化(発酵)を助けていると。で、孵化したばかりのベビーイグアナは母親からそれを受け継ぐわけではないので、土や大人イグアナの糞を食べることでこのバクテリアを体内に取り入れる。それをするチャンスを与えられなかった幼体イグアナは、バクテリアを腸内に持つイグアナに比べて成長が遅いそうな。
 そうなのかあ。カメンコもチビのころ食糞して焦ったけど、あれも必要なことだったのかもね(自分の糞じゃ意味はないけど)。イグコも確か、イグリンコのウンコ食べてなかったっけ? トイレ認識させようとしてちょっとだけなすりつけたウンコを……。と過去記事探したらやっぱりあった。でももう一歳近いころだから、今さら腸内バクテリアでもない気もするけどね。
 いつかイグコの卵が有精卵でチビイグ101匹大行進になったら、イグコのウンチ食べさせることにしよう……。(→ダメだそうな、下参照)

ノルテ(北風)がイグアナ発情の合図

 メキシコのこのあたり(南東部)やカリブ海、メキシコ湾沿いあたりの気候は、雨季(6〜11月、ハリケーン季節を含む)、ノルテの時期((12〜2月)、乾季(3〜5月)と三つに分けると、カリブ海沿岸で生態学やってたころに論文で読んだけど、このノルテ(突風ともいえる強い北風)がイグアナの発情を促す、というような記述が(49p、第二段落冒頭)。そうだったのかあ。うん、あの強風が吹くとなんかざわざわするよね、わかる気がするw
 そして乾季のあいだに交尾と産卵、三ヶ月後の孵化のころには雨季になってて、チビイグアナたちが隠れる葉影も、食べる新芽もたっぷりという寸法。

水上を走る

 幼体イグアナはグループで生活する、ってのは前の本で読んで、裏庭の光景を思い出し納得したものだけど。集団生活は捕食者から逃げるのに都合がいいらしい。で、逃げるときは後ろ足だけで立って走ることもでき、その際尾はバランスを取るために持ち上げた状態だそうな。まあイグコもときどき、ふわふわと浮くような走り方をするから、それは何となく想像できる。
 びっくりしたのは、その走り方で水面を沈むことなく走れるっていう記述(66p)。バシリスクなんかはそういうことするってどこかで読んだ記憶があるけど、イグアナもできるのかー。まあ、体が軽い幼体の時期だけだと思うけどね。


 ここまでが、第6章(野生イグアナの生態と生物学)まで。
 飼い方についてのあれこれ(第7章)も適当に、参考になりそうなところだけつまみ読み。テラリウムの作り方とかけっこう詳しく書いてあるけど、まあドイツでならそれも必要だろうけど(気候的に)、メキシコでそこまでする人はいないかな……。

成体と幼体の同居について

 当然、ダメって書いてあるんだけど(70p)、その理由が、成体が幼体をおいしいおやつと誤解するから、ってのは、動物性蛋白質は絶対食べないと何度も書いてあることと矛盾しないのかなあ? でも発情期でテリトリーの主張をしているときでなければ互いを攻撃しないという記述もあったし、発情期であってもオスメスもわからないような幼体を攻撃する理由が思い当たらない。
 まあだからって幼体と成体を一緒にしてみようとは思わないけど、謎だな。

カメとの同居について

 これちょっとびっくりだった情報。カメとの同居は非常に用心すべきである、カメは長期的にEntamoeba invadensを排出していることがあり、これはカメには何の影響も及ぼさないが、イグアナ(トカゲ、という表現になってる)は感染すると数週間以内に死亡する。とのこと(70p)。まあカメンコは今さらだし大丈夫とは思うけどね。

室内で起こりうる事故

 ドイツ人のイグアナコミュを見ていると、イグアナがテラリウムを出て室内を歩き回っている写真に対して、なんで?ってほど強い反感を示す人が多い。私は、動物飼うならコミュニケーション取りたい派なので、ガラスケースに収めて眺めるだけなんて飼ってる気になれないと思うんだけど、ちょっと出すくらいいいじゃないかー、と思ってた。
 で、この本でも室内での滞在について書かれていたので興味津々読んでみた。もちろんドイツでは気候の問題があるからってのが一番大きい。保温がしっかりできる構造のドイツの建物でも、まあ30度にする人はいないからそれはしょうがないか。25度がイグアナにとってぎりぎり下限なら、夏の日中くらいは出してもよさそうに思うけど。でもそう思っているうちに、まあ大丈夫、まあいいか、で繰り返し低温にさらすことによってイグアナの寿命を縮めるってのは確かに要注意。
 そして私にも起こりうる事故として、イグアナが部屋を歩き回ることで、

  • コンセントに爪を突っ込んで感電
  • 舌先で匂いを確認しているうちに落ちている髪の毛を飲み込んで気管に入り込みもつれて絞まってしまう(Anderson 1976にそんな事例があるらしい)
  • ガラスを認識せず突っ込んで割れて大怪我、など。

 うーん、うちの窓ガラスはたいていすごく汚れてるから(自慢にならないが)突っ込んで割ることはまずないと思うけど、ワンコはたまに私の長い髪の毛を食べちゃって、ウンコがお尻からぶら下がって困ることがあるしねえ。ワンコなら笑い話で済むけど、イグコだと問題かもしれない。コンセントについても考えてなかった。イグコに叩き落とされたら困る置き物なんかは全部片付けたけど。
 さらには、網戸を破って逃げるとかw、どこかの隙間に尻尾が挟まって切れちゃうなんて事故も考えられる。一応気を付けてはいるつもりだけど(網戸に関しては対策済み)、まあこれからもいろいろと様子を見ながら事故を想定して早めの対策を、と肝に銘じました。

ソバは日光アレルギーを引き起こす

 食べさせちゃいけない植物について(7.6.1章)、シュウ酸(ホウレンソウ)とか硝酸塩(Nitrat、ホウレンソウ)とかサポニン(ホウレンソウ)とか……w はまあよく聞く話だけど。
 Buchweizenって何だっけ、と調べたら、ソバ。で、ソバはFagopyrinなる物質を含んでいて(学名もそのまんまだね、Fagopyrum)、これによって動物は日の光に対して過敏になるんだそうな。えーーー。動物は、ってイグアナ以外もってこと? 人間は? イグアナにソバのもやし(スプラウト)を食べさせてから太陽光線にさらすと、結膜炎を起こして目がひどく腫れあがるとか。うーん、アレルギーで結膜炎ってのはあるから(私もある、ソバじゃないけど)、そういうことかなあ。でもイグアナの場合はアレルギー(個体によって有無がある)ではなくて、誰でもってことだよね。ただし、間違って食べちゃっても、一日か二日暗いところにいさせれば症状は消えて、特に治療しなくても治るらしい。

飼育下での寿命

 飼い方がちゃんとわかってなかった昔は4年とかだったらしい……。それから、もっと生きることがわかってきて、飼い方も改善されて、動物園で15年、その後大学で6年飼われたイグアナ(つまり21歳)とか、28歳のイグアナとかも出てくるように。
 普通に(ドイツで)飼えば15〜20年が妥当な寿命ではないかとのこと。しかし、Cyclura pinguis や Cyclura stejnegeri(西インド諸島の岩イグアナ? West Indian rock iguanas)が40年以上生きることから、グリーンイグアナももっと生きてしかるべきでは、と著者(Gunther Köller)。


 第8章、繁殖について

発情期のオレンジはrhinolopha亜種だけ

 オスの発情期の特徴が挙げられてるんだけど(98p)、オレンジ色になるのはIguana iguana rhinolophaだけなの!? グリーンイグアナ全般かと思ってたからびっくり。それも、頭、前足、クレストにと限定されてる。確かに、イグリンコを見ているとその部分がオレンジになりやすいけど、でも今イグリンコはけっこう全身が(24時間ずっとじゃないけど)オレンジ色になってるけどなあ。
 発情期のオスの特徴は

  • I. i. rhinolophaの頭、前足、クレストに強いオレンジの発色
  • 鼠蹊孔の拡大とそこからの分泌物の増大
  • 自己主張とボビングの回数増加
  • 落ち着きなく、動き回る
  • 食欲減退
  • ヘミペニスの突出

 だそうです。

イグアナのレズビアン

 著者の飼育するイグアナで、メス同士が交尾することが何度もあったとか(98p)。写真付き(99p)。オスの役割をするほうは首筋に噛みつくなどの行為もこなし、受け入れるほうもほぼ抵抗なく交尾のポジションを取る、行為は3〜8分(短め)。どちらもメスであることは、それ以前に有精卵を何度も産んでいることから間違いなし、とのこと。
 ネット上のどこかの掲示板で読んだけど、両性具有のグリーンイグアナもいるらしいと書いている人がいた。ソースは? と訊かれて、でも答えはなかったように記憶してるけど、もしかしてこれと関係あるのかな? と思い出したのでメモ。根拠はない。でもメス同士の交尾でちゃんと有精卵が生まれたら両性具有ってことだよね。この本には、そこまでは書いてない(つまりたぶん生まれてないか検証不可能か)けど。

攻撃的なイグアナに対して

 ここで、発情期のオスが飼い主に対しても攻撃的になるという記述の流れで、どう対応すべきかもチラッと書いてあった(100p)。
 人間側は攻撃的なイグアナに対し、注意深く用心して、しかし必要なときにはエネルギーと決断を持って対応すべし。そうすることによって自身の安全確保と、イグアナに対してどちらが優位であるかを見せつけることになる。不安や決意のない様子、まして逃げることはイグアナの攻撃性と優位性を助長するのみである、とのこと。
 光や保温、餌の引き上げはイグアナの健康を損ねるので、やるべきではない。去勢による行動の変化や健康への影響は、まだ充分なデータがないので何とも言えず、現時点ではお薦めしない。と書かれている。


 イグコはワンコに対してはけっこう容赦なく尻尾攻撃を繰り出しているし(効果はほとんどないけど)、その様子を横で見てはいるけど、私は今のところ本当に攻撃的なイグアナの経験がないからなあ。まあこのまま一生なくて済むならそのほうがいいのかもしれないけど、でもイグリンコだっていつ何があって豹変するかわからないし、イグコも同様。とりあえず毅然とした態度で、ってことは覚えておきます。
 前のページにも、発情期のイグアナには、顔をイグアナの口が届く範囲に置かないこと、と書いてある。うーむ、今発情期らしいイグリンコにチューする勢いで顔を近付けてますが……やめたほうがいいのかなあ。別に、今さら顔に傷がついたら困るってお年頃でもないけど。

産卵ボックスにはトンネル

 もう一冊の(ページ数、内容ともに倍以上の)イグアナ本には、産卵ボックスの温度と天井の低さが言及されていたけど、こちらの本にはそれに加えて入り口がトンネル状であること、というのが図解入りで強調されていた(102p)。まあそれを参考に、イグコにも疑似トンネルを作ったわけだが、それがなかったらどうなっていたのかはわからない。絶対必要というわけではないのかもだけど、この著者は絶対不可欠と書いてる。しっかりしたボール紙で作ったトンネルを箱に外付けにしてもいいし、箱のなかに、入り口の穴から壁沿いに仕切りをつけてトンネルっぽくしてもいいとのこと。来年のイグコには、もう少しスマートなトンネルを用意してやるつもり。


 産卵から孵化までについては、部分的にはすでに精読したか、今のところすぐ必要ではないことばかりなので適当に飛ばし読み。生後間もないイグアナベビーの世話についてはイグコへの反省を込めて読んだ。面白いと思ったことをメモ。

  • 生まれてすぐに最初の脱皮をする。
  • 孵化してから最初の餌を食べるのは6〜9日後。それまではヘソについた黄身の残りで賄う。
  • 孵化して間もないベビーには熟した果物は、命に係わる発酵を起こす可能性があるので注意すべし。
  • 最初の数日はとても驚きやすい。この時期に気を付けて接すればすぐに懐く。
  • 成体の糞を食べさせるのはやめたほうがいい(!!)。成体では問題のない病原菌もベビーには重篤な病気を引き起こすことがある。腸内細菌を整えるには、肥料の入っていない園芸用土を与えるべし。

 このあと、平均どのくらいの大きさと体重で成長するかなどの仔細な数字が並ぶ。

  • 尾の一部が切れた幼体は、完全な幼体に比べて成長速度が格段に落ちる。尾を再生するために余分なエネルギーが必要となると思えば当然のことなんだけどね。
  • 最初の一年は、常に脱皮状態。うむ、イグコも確かにそんなだった。今はてきめんに回数落ちてるしね。


 第9章は、もう一冊の本にも載ってたIguana delicatissimaについて。なんでこのイグアナ、いつも取り上げられるんだろうか、ドイツではけっこう多いペットなんだろうか。とりあえず関係ないのですっ飛ばす。


 第10章は病気について。最初に、食欲不振の場合のチャート式検索表がある(123p)。
 食欲不振の原因が → ノーマル(メスの場合産卵2〜3週間前、オスの場合発情期の1〜2ヵ月)
          → アブノーマル → 病気によるもの → 感染症寄生虫バクテリアなど)
                             → 非感染症(便秘、脱水、内臓疾患など)
                   → ストレスによるもの(環境の変化、落ち着けない環境など)
                   → 飼い方によるもの(不適当な餌、温度や湿度など)

  • 飼い主が変わったことに対する抗議として数週間食べなくなる神経質なイグアナもいる(124p)
  • ゴムホースを使った強制給餌の方法(124〜5p)。最初は消化のいいAmyninやBoviserinを与えること。それから離乳食、すりおろしたニンジンなどを。日々、分量を増やしていく、8〜15g/kg体重など。
  • 寄生虫について(125p〜)、種類によってどの薬をどれくらいなど、具体的に。
  • 感染症でもっとも多いのは膿瘍(Abszesse)(129p)。
  • 栄養問題でもっともおおいのは痛風・関節炎(Gicht)(130p)。
  • 骨ジストロフィー、骨形成異常も多い。理想的なカルシウム/リン比率は1.0〜1.5:1.0(130p)。リクガメよりずいぶん低いんだな。
  • 食生活の問題による病気は血液検査で早期発見が可能。

  正常な血中尿酸値は53.5〜392.3μM/l
  正常なカルシウム値は1.8〜3.3mM/l
  正常なリン値は1.3〜2.9mM/l

応急手当あれこれ

 135pから、獣医にかかるまでのあいだに飼い主ができる応急手当について書かれている。これをするかしないかで予後に差が出てくるとのことで、覚えておいて損はなさそう。

  • ひどく衰弱し、脱水状態のイグアナはすぐに強制給餌、給水すべし
  • 噛み傷は生理水(0.9%塩水など)で洗い、70%アルコールかBetaisodona(ヨード水?)で消毒。ただし、アルコールとヨードを同時に使わないこと。
  • 尾の怪我は、完全に切れたらできることはもうない。まだくっついている場合は消毒し、固定する。小さいイグアナにはストローが便利。
  • Lebertransalbe、肝油クリーム? 外傷、火傷に。
  • 脱腸、脱ペニスはすぐに医者に、患部を生理水で洗って湿った包帯で保護。ただし、発情期以外でのヘミペニスの突出は異常ではなく、特に排便のあと出す習慣のある個体もいる。出たまま数分以上戻らない場合は異常。


 第11章はイグアナの絶滅危機と保護プログラムについて。こういうの読んじゃうと、じゃあイグコもイグリンコとうまく行ったら有精卵産んでもらって、チビイグアナを増やして、ある程度の大きさ(一年とか)で生き延びるチャンスが大きくなってから自然に返したりしてみようかな、と思っちゃうね。まあ実際には、何十匹のチビイグたちを育てるのは難しいだろうけど。


 ひとまずこれで読了。コンパクトで読みやすく、いい基本の教科書になると思う。